2025/11/13 16:44

清らかな香りが、明日を連れてくる

― ティートゥリーの物語 ―


プロローグ ― 雨上がりの朝、森が息を吹き返すとき ―  


夜の雨が静かに上がる。  
窓を開けると、湿った風が頬を撫でた。  


そこに混じる、ひとしずくのティートゥリー。  
澄んだ緑の香りが、  
濁りのない朝の空気を満たしていく。  


深く吸い込むと、  
眠っていた心が少しずつ目を覚ます。  
それは、森が静かに呼吸をはじめるような瞬間。  


香りは、雨のしずくとともに、  
時を越えた旅を始める。  


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第一章 オーストラリア ― 森とともに生きる民  


遥か昔、南の果ての大地に、  
ティートゥリーの森が広がっていた。  


先住民アボリジニたちは、  
その葉を手に取り、火傷や傷を癒した。  
葉を湯に浮かべ、蒸気を吸い込み、  
風邪や熱に苦しむ者を看病した。  


彼らは言った。  
「この木の香りは、森の精霊の息吹だ」と。  


ティートゥリーは、  
命を守る木として、森と人を結んでいた。  


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第二章 戦火の中の木 ― 命を守った香り  


時は流れ、世界が戦火に包まれたころ。  
オーストラリアの兵士たちは、  
ティートゥリー精油を携えて前線へと向かった。  


消毒液も乏しい戦場で、  
その香りは、ただ一つの「癒しのしるし」だった。  


包帯にしみ込ませれば、  
荒れた皮膚が落ち着き、  
恐れと疲れの中に、わずかな安堵が訪れた。  


戦地の報告書には、こう記されている。  
「この木の香りは、兵士たちの心まで洗った。」  


ティートゥリーは、  
痛みとともにあった時代にも、静かに寄り添っていた。  


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第三章 研究室の光 ― 科学が見つけた森の力  


20世紀の終わり。  
研究者たちは、ティートゥリーに含まれる成分  
「テルピネン-4-オール」の働きを明らかにした。  


それは抗菌・抗ウイルス・抗炎症の三つの力。  
長い年月を経て、  
森の知恵は科学の言葉で語られるようになった。  


けれど、  
香りそのものが与える静けさと安心は、  
どんなデータでも測ることはできなかった。  


ティートゥリーの香りは、  
“清め”を超えて“再生”をもたらす――  
それは、人の心が本能で知っていた真理だった。  


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第四章 森の記憶 ― 静けさの中の再生  


森は、火に焼かれても、  
やがて芽吹き、緑を取り戻す。  


ティートゥリーの葉もまた、  
嵐のあとに新しい香りを放つ。  


焦げた大地を癒すように、  
風が香りを運び、  
森はもう一度、息を吹き返す。  


それは、自然が教える“回復”のかたち。  
壊れても、終わらない。  
香りは、その約束を伝えている。  


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エピローグ ― 今も変わらぬ森の友 ―  


夜が明け、  
森が朝の光に包まれる。  


今朝もまた、ティートゥリーの香りが静かに満ちていく。  
澄んでいて、緑のようで、どこか懐かしい。  


その香りは、  
新しい一歩を踏み出す心へ、  
「大丈夫」と語りかけるように届いている。  


夢の奥では、  
雨上がりの森も、戦場の祈りも、研究室の灯りも、  
やわらかく溶け合っている。  


ティートゥリーは、  
その再生を見守るように香り続ける。  


そして今朝も、  
誰かの心をそっと包みこみ、  
やさしく――抱擁している。  



EMBRACE(エンブレイス)――  

英語で「愛情を持って抱擁する」を意味する言葉。  

香りは言葉を持たないけれど、  
そっと人の心を包み、寄り添ってくれる。  
その想いを胸に、「EMBRACE」は生まれました。